| 第17回 「末梢の循環障害」 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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今回の話題を何にしようかと考えていたところ、日頃お世話になっている運動療法トレーナーの気合いのYさんから「お客さんで下肢の閉塞性の動脈硬化症と診断されている人がおり、どのような運動指導をしたらよいのか?」との質問を受けました。そこで今回はこの病気を中心に抹消の循環障害と運動についてお話しする事にしました。 ヒトは血管と共に老いるという言葉の通り、人口の高齢化に伴い動脈硬化に起因する疾患を持つ患者さんも増えてきました。心臓の筋肉を経由する冠動脈・脳動脈に動脈硬化が生じると、それぞれ心筋梗塞・脳梗塞となる可能性があります。胸部や腹部の大動脈においては大動脈瘤(大動脈がこぶのように膨れる真性動脈瘤と、三層からなる動脈の壁がさけて血管の内腔が二重になる解離性動脈瘤の2種類がある)という疾患があり、更に大動脈からの分枝である腸骨動脈瘤以下の下肢の動脈や、頚動脈では血管の内腔が狭くなり、詰まってしまう閉塞性動脈硬化という病気があります。 動脈硬化、とりわけアテローム硬化は、遺伝的要因と加齢による変化に加え、ライフスタイル等の環境因子によってもたらされ、その促進要因として高血圧、高脂血症、耐糖能異常、肥満があげられています。閉塞性動脈硬化症は血管の粥状硬化(アテローム)病変によって動脈が閉塞し、その血管の支配領域に虚血状態を来した状態と定義されています。 動脈の閉塞には徐々に慢性的に完全閉塞するものと、狭くなった血管の内腔に突然血栓が詰まって完全閉塞する急性の動脈閉塞があります。急性のものは極めて重症で、ただちに血栓を溶かす薬物治療やカテーテル、手術等により詰まった血流を再開通しないと、見る見るうちに下肢の筋肉が腐ってしまい、下肢の切断を余儀なくされたり、筋肉の壊死による様々な有害物質が全身の臓器に作用して死に至る事も少なくありません。従って急性期のものは除外して、慢性期の動脈閉塞症例についてお話し致します。 慢性的に血管が閉塞しますと、その血管の支配領域の血流が減った筋肉に他の健常な血管から側副血行路という自然のバイパスが伸びていき、少なくなった血流を補うメカニズムが働きます。この側副血行路の発達の程度、そこを流れる血流の量の程度によって疾患の重症度が異なり、少々の運動では全く症状の無いものから、安静時には症状は出ないけれども、200メートル程歩くと患肢が痛くなり、びっこを引くようになる間歇性跛行と言われる症状があるもの、更には抹消の皮膚が潰瘍を作ったり、壊死に陥ったものまで様々です。重症度の判定には、Fontaineの分類が用いられており、表に示すように自覚症状と下肢の脈拍の触知、足関節部の血圧等により診断が下されます。運動療法が安心して勧められるのはFontaine分類のI度であり、積極的な運動により側副血行路がより発達し、良好な予後が期待されます。 しかしながら、200メートル程度の歩行で下肢の痛みが出現し、足関節部での血圧が50mmHg未満の重症度が度以上の症例では運動は勧めるべきでなく、専門医の診察を受ける事が必須です。血管造形検査等により狭くなった血管の部位や狭窄の程度により、薬物による内科治療や風船やレーザーで狭くなった血管を拡げる血管内手術、更に人工血管を用いた手術等が選択されます。これらの治療が成功し、症状が安定した状態で医師の処方によって、リハビリを兼ねた運動療法が行われる事になります。
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